試験に集中しなければと思いつつ、井上くんの姿をずっと探してしまって、トイレにでも向かおうかという時、隣の隣の教室ぐらいにいた。
なんだか大きい男の人と話していたみたいだけど、わたしがそれとわかった時に、ひょこっと井上くんの頭が動いた気がした。お互い顔を見れる距離になって、こんにちは、と言いあった。いつも積極的に挨拶してくれるのは、なんだろう、主義なのかな。知ってる人は自分から、とか。それだけで嬉しくなって、にこやかに挨拶するだけでいっぱいいっぱいになっちゃった。
トイレが混んでいたのを理由に井上くんと話せるかとすぐ戻ったけど、照れてしまって通り過ぎるだけだった。

試験終わりに帰っていく井上くんと目が合ったけど、特にリアクションもされず、大きな男の人とずっと話していた。それが後々寂しくて、最後の姿になるかもしれないのにと思い返していた。その程度。わたしが他の塾の人をそれ以上と思わないように、その程度の存在でしかなかったのかな。
外に出ても、もう姿はなかった。

村上さんと仲良くなれた。
この人とももう塾でも会えないかもしれないのに、ちゃんと連絡先聞けばよかった。女の子にそんなこと思うのも久しぶりだった。最初印象悪かったのにな。帰りがけ、好意に甘えればよかった。あなたがいたから試験寂しくなかったよ。また会いたい。

塾ロスとかするのかな。
試験勉強も試験も楽しかった。
最大の山場はこれからだけど。