人間の心とは不思議なもので、出来事は変わらないのに日によって感じ方が変わっていく。
井上くんのこと。試験の日の出来事。
満月を過ぎた今日は、ネガティブになっていくようだ。
反省して過ごすのは、あと二ヶ月体が持たないので、もうあまり深く考えないようにしよう。人にオープンにしよう。今日は第一弾、前の学校の先生が家に訪ねてきてくれる。

食欲があまりない。
朝起きて、何か食べたいけど胃が元気なかったり積極的に食べる気がおきない。食べなくても予定がのんびりしてて大丈夫、というのもある。ゴロゴロしたくて、好きに横になってはウトウトしている。漫画やテレビを時間を気にせず見ている。

今わたしには道が二つある。
一つは落ちて、四月から講師の道。
二つは合格、四月から先生。
井上くんも二つ。
一つは講師、二つは先生。

そこで道が交わるのは、同じ結果の場合。二人とも落ちたら、秋の塾から会える可能性がある。来年の試験まで、定期的に会えるかもしれない。そのうち連絡先を聞けたり、食事会があったりする可能性もゼロじゃない。
二人とも合格したら、四月から初任者として同じスタートが切れる。研修で会える機会も多いかもしれない。塾に握手をしに呼ばれた時、連絡先を交換できるかもしれない。

自分の道を進むこと。
その先にあなたがいると思ったけど、ここで道が分かれてしまうのか、気になるところ。わたしはせっかく一次一部免除になるんだから、大概働くしかない。勤務先で一緒になりたいなぁと思うけど、当たる確率なんて、随分低い。井上くんだけ受かってたら、どこに行ってしまうかわからない。嶺北の可能性だってある。

道、か。意外と二人ともだめなら、わたしの望みどおりなのかもしれない。でも井上くん、受かってしまいそうだ。わたしはダメっぽいから。
追いかける形で合格するのも、なんだか気合いが抜けちゃうなぁ。