会えた。お話までできた。

玄関を入ったら、ちょうど渡辺くんが職員室のドアから出てくるところで、出てきて欲しいと思っていたから、出てくるような気しかしていなくて、ほんとにすごいタイミングで、わたしの姿を見たら寄ってきてくれて、寄ってくれてから下の子に目をやって、その表情からは、とまどい、可愛い子を見る目、わたしへの思いやり、などが一瞬で読みとられ、わたしは改めて先日のお礼をし、綺麗に見えるよう努めて、思いが伝わるように目を見つめ、そして、離れた。

もう、職員室では目は合わなかった。

帰り道は、やっぱりふと恋しくなり、すごく会いたくなったりした。あなたはそう思っていないのかな。若いあなたは、希望や楽しみがたくさんあって、わたしというピースが無くなったところで、大した損失ではないのだろうか。

もっと踏みこんで聞けばよかったなと思うことや、もっと近づけるチャンスがあったかなと、そしてもういよいよ会う機会がないことを、後悔する気持ちがどうしても押し寄せてくる時があり、そんな時、渡辺くんもそう思っている気がどうしてもしてしまって、会える方法はないか、向こうから連絡はないか、不毛なことを考えてしまう。

広野くんのことを諦めたように、といっても最近までかなり希望を持っていたのだけど、道が断たれたと感じて、次の矛先でも見つけて、忘れていく、そうなってしまうのかな。わたしの近ごろの数年はかなり痛手だから。刻一刻と劣化する一方だから。もう、15年後とか言ってられないのさ。

 


あぁ。このやる気のなさは、ロスなんだな。