井上さんを見た。
残念ながら、見ただけだった。
でもまた、運命的だな、と思った。

今日は地元の温泉施設で夕飯だと決まっていて、だから学校も少し遅くなっても余裕があった。
上の子と温泉を楽しんだ後、ゲームセンターのところでコインが引っかかり、お店の人を探さないといけなくなった。階段のところまで行くと、サラリーマン風の人が来たので声をかけようか迷うと、その人はさっと走り過ぎてしまって、やっぱり施設の人じゃないか、と思ったところで、横顔をみてふと、あれ、この人井上さんだ、と気づいた。
あれ、井上さんじゃないか。会えてしまった。ええ、こんな偶然、ある。何してるんだろう、こんなところで。スーツ着て、おつき合いかな。
そうだ、入口に小学校の団体が書いてあった。さっきレストランに入ってた団体の中に、井上さんいたのか。同じ場所で、これもまた絶妙なタイミングで、すれ違うことは決まっていたのかな。

これが最後か、これ以上の偶然があるのか。やっぱり同じ市内で同じ職種で働いていれば、重なることも多いのかもしれない。今回は関係ないけど。

目があったような、でもやっぱり全然気づかれなかったような。結構がんばって見たんだけどな。忙しそうだったから、声はかけられなかった。話したかったな。タイミング、無理に合わせようとしたからな。もう少し遅かったら、よかったのかな。焦ったのが、運命を遠ざけてしまったかな。まぁ、すっぴんろくな格好してなかったけど。
あそこまで近くにいたら、話しかけたかったな。しばらく落ちこむかも。
あの時、あなたは、粟野小学校って言ったんだね。