教室移動で仕事がなくて、そんなもんかとあれこれ片づけていたけど、確か掃除の時間が近づいたので校内をうろうろし始めたんだっけ、特支のクラスが1人で忙しそうだったので、手伝い始めたところで先生が空っぽになったクラスに戻ってきたのが見えた。先生もこちらを見たようだったので嬉しがっていると、先生がやってきて今お時間ありますか、リボンを結んでほしいとお願いをしてきた。もしかしたらわたしを探してくれていたのかもしれない。まあ離任する人に他の離任する人へのプレゼントを包装させるのはどうかと思うんだけど、ああ、もしかしたら手伝わせてくださいね、のあれだったのかもしれない、なんだか自然に先生のクラスの掃除を手伝えたから、これも先生の術中なのか、運命のひとつなのか、また幸せな形で作業できたのだった。

 


お昼前だったかな後だったかな、先生が机にきた時に、実は、もう一つお願いがあるんですと思いきって伝えてみた。先生はちょっと構えた雰囲気で、返事のようなものをするので、また機会をみて言います、と言ったんだっけ。

 


タイミングのずれた盛り上がりに欠けるご飯が終わって、あ、でもご飯の前にあの紙取ってくれたわ、歯磨きして、先生も何やら着替えて戻ってきて、画用紙などを持って出ていった。しばらくして、これはサインではないかと。今お時間ありますよと。え〜、今か〜、とちょっとためらって、よしと決心して出ようとしたら、主任の先生とかぶった。しまったな〜と行方を追って、先生もどこからかやってきて主任の先生と話し出して、う〜ん困ったなと、児童玄関のかげに隠れていたら心臓がドクドク鳴り出して、いやいや、この感じで今いけないでしょ、みたいになったんだけど、歩く音がして、先生だったから、もう呼びとめてしまった。先生はやってきて、先生もたぶん今なんだろうなという面持ちで近づき、わたしが握手してください。というと、心残りってそれですかという。わたし心残りって言いましたっけ、と焦って笑って、たぶんわたしはお願いってしか言ってないんだけど、心残りと聞こえたのかなと思いながらはい、と言うと、先生はじゃあ、握手しましょう、みたいなことを言って、わたしの手を両手で包んでくれた。本当にありがとうございましたといったことを言いながら、手が離れた時、しばらく間をおいて、ハグしてもいいですか、と聞いた。…それはちょっと、できないですと先生は断ってきた。はいっ、とハグのポーズを差し出しても、いやとか何とか言い、ほんとお世話になりました、とぺこぺこ頭を下げてきて、伸ばした腕に握手、としようとするのでわたしは手を引っこめ、鏡に映ってるし、と言うので確かに鏡に映ってるのは気になっていた、映ってますねー、じゃあ鏡に映らないところでしますか、と一段降りても先生は首を振って動かない。ドキドキしちゃうんで、と言う先生に、わたしもバクバクです、と胸を押さえて返す。埒があかないので、えいやと自分から抱きついた。その時、先生の腕の上から押さえこむ形になってしまい、これはハグではないな、と思いつつ、なんだか腰回りがぶつかって、先生の大事なところがわたしの足らへんに当たったような感覚があった。わたしがハグをやめると、先生は教採の話を持ち出して、わたしを冷静にさせようとしたのかなあれ、わたしははきはきと答えてやって、目標を聞いてもらった。それも嬉しかったし、やっぱり腕の下に抱きつきたかったのでもう一回ハグしにいった。先生が全然力を入れてくれないので、先生も抱き返してくださいよー、と思わず文句が出たよね。

これで、心置きなく、学校を去れますと告げて、一緒に戻った。また一緒に働けるといいですね、みたいなことを言うので、今の今でほんとにそう思ってるか〜?と突っこみたいのをこらえて、そうですねだか可愛く受け答えしておいた。嘘でもこれの直後にそう言ってくれたのは嬉しかったのだ。

 


ああ、楽しかった。

 


職員作業も思い切って一緒にして、なんだかドキドキした。先生を助け、先生も助けてくれた。

 


もしかしてわたしが思うより職員室で認知されているのかな。と思った今日だった。